広島県の三次(みよし)市と、島根県江津(ごうつ)市を結ぶ、JR三江(さんこう)線。1930年(昭和5年)に江津市側から部分開業し、1963年(昭和38年)までに三江南線として三次−口羽、三江北線として江津−浜原が完成。その後、しばらく南北に分かれたままの状態が続きますが、1975年(昭和50年)8月31日に残っていた口羽−浜原が開通して全通。三次−江津108.1kmが完成し、広島県と島根県が結ばれました。

こちらは、三江線(赤線部分)の路線図です。山陽と山陰を結ぶ、陰陽連絡線としての役割も期待できるかと思われた路線でしたが、江の川に沿って進む路線は、最後に開通した口羽−浜原間以外は線形も悪く、全線の通過には大変時間もかかり、また沿線は人口希薄地帯であることから、利用は極度に低迷。ほとんど優等列車も走らないまま、中国地方のローカル線の中でも屈指の超閑散路線となってしまいました。代替道路の未整備という理由もあり、何度も廃止の危機を乗り越えてきましたが、2016年9月30日にJR西日本は、遂にこの三江線の廃止届を提出。今回は、2018年3月30日をもって廃止の予定となってしまった、この三江線を訪ねてみることにしました。

広島県三次市から北へ少し。江の川(江川)のゆったりとした流れに沿うように、1本の鉄路が見えました。茶色い石州瓦の屋根と、美しいコントラストを描く風景。JR三江線です。

そして小さな駅舎の口羽駅(図1番)に到着。こちらは1975年(昭和50年)に三江線が全通するまでの終着駅。三江南線の終点として1963年(昭和38年)に開業しました。

列車は、三次方面が1日5本。江津方面は1日わずか4本。

駅に掲げられている三江線のポスター。

跨線橋などはなく、駅舎からホームへは、線路を直接横断します。

日中は7時間も列車がありません。静かなホームに、しばらくたたずんでいても、何も動きはなく、時を止めたかのような静寂が駅を支配していました。

口羽駅から、江の川に沿って、更に北へと進みます。口羽駅から浜原駅までは、1975年(昭和50年)に開通した区間。高架と鉄橋、トンネルが連続し、直線的に進む立派な鉄路は、1日わずか4往復のローカル線にはもったいないような設備です。ここだけ見ると、智頭急行のように、特急が轟音を立てて走り抜けていても、何らおかしくないような光景。

一方、江の川に貼りつくように進む道路は、1車線の隘路。代替道路未整備としてバス転換されなかった理由が分かるような、悪路です。しかし対岸には、国道375号線が整備されていますので、廃止後は、そちらにバスが走るのでしょうか。

そして見えてきたのは、江川第3橋梁です。こちらはトラス橋となっており、三江線は上部を通過。いわゆる上路式トラス橋となっていますが、異色なのは下部が歩道として利用されていたこと。上を鉄道が走り、下を歩行者が歩ける、2重構造の橋となっていました。鉄道橋を一般の歩行者に開放していた点でも異色の存在でしたが、これは、江の川に架かる橋が少なく、この付近に対岸と行き来できる橋がなかったため。現在では、すぐ下流側に道路橋が完成しており、この異色の鉄道橋歩道も役割を終えました。

その江川第3橋梁から、すぐ近く。三江線の高架橋に貼りつくように、そびえるコンクリートの壁が見えました。

名物(?)の宇津井駅(図2番)です。駅の入口には・・・階段しかありません。

見上げると・・・高い・・・。高さは約20m。実に5階建て以上のビルの高さに相当します。ここはホームが日本一高い場所にある、とも言われる駅。

もちろん、エレベーターなどという気の利いたものは存在しません。ホームまで、ひたすら階段を登ります。

入口からホームまでの段数は116段。こちらは下を振り返ったところ。

宇津井駅ホームに到着しました。

ホームから見下ろした、家々。

下をのぞくと・・・高過ぎです・・・。

「次の列車は○分だから」と、発車時刻ギリギリに駅に着いたのでは、決して列車に間に合わないという、恐るべき駅ですね。

ホームの待合室には、旅行者のためのノートが置かれていました。バリアフリーとは真逆を行く世界、三江線宇津井駅でした。

続いてこちらは、照明もない暗い階段・・・。

登り切るとホームに出ました。宇津井駅の1駅となり、石見都賀駅(図3番)です。

こちらも1975年(昭和50年)の全線開通時に開業した駅。実は1988年(昭和63年)に宇津井駅とともに訪問したことのある駅なのですが、当時の写真は残念ながら残っていません。ただ駅の風情は、28年経っても、何も変わっていない感じ。

ホームには、地元の方が植えているのでしょうか、美しい花がたくさん咲いていました。

続いて、こちらは浜原駅(図4番)です。こちらは元の三江北線の終着駅で、駅前には三江線全通記念の碑も。三江線としては大きめの駅なのですが、ここにも駅員の姿はありません。

こちらは、ホームから三次方面を見たところ。

運転のある時間帯ではなかったのですが、本日は1両の列車が停車していました。石見神楽のラッピング列車です。団体の表示で、エンジンも切られていたため、臨時列車の運転として入ったのかも知れません。

浜原駅から江津方面。

留置中の列車でも、その存在に救われるような、三江線、浜原駅でした。

そして浜原駅の1つとなり、粕淵駅(図5番)です。こちらも周囲は市街地となっており、三江線としては、比較的人口の多い区間。元々は島式ホームで2線ありましたが、1線は埋められて片側1線となり、跡地は駐車場等になっていました。

粕淵駅は美郷町商工会館と一緒になっており、商工会の方が、駅の窓口も兼務しているようです。ただ訪問時は、列車のない時間帯だったためか、窓口は閉じられ、人の気配はありませんでした。

ということで口羽駅から粕淵駅まで、三江線沿線の様子を見てきましたが、ここから昔の写真を少し紹介したいと思います。私が以前、訪問した当時の写真は残っていなかったのですが、今回「べるつく」様から、ご厚意により拝借することができました。この場をお借りして、お礼申し上げます。

撮影・べるつく

1988年(昭和63年)の浜原駅。当時から廃止の危機感がうかがえます。

撮影・べるつく

1988年(昭和63年)、宇津井駅に到着する普通列車。

当時は、粕淵駅も浜原駅も有人駅であり、入場券も発売されていました。当時の硬券入場券です。(所蔵・いそしず)

全線開通から41年。三瓶山への観光ルートして利用されることもなく、また線形の悪さから、広島−出雲、福山−浜田などの連絡ルートとして利用されることもなく、ひたすら地域交通の足として存続してきたJR三江線。何年経っても変わらないかのような風景の中で、遂にその終焉の時が、決まろうとしています。国鉄改革の嵐の中、当時の鉄道建設の駆け引きの中で、全通を果たしたとも言われる三江線。その誕生秘話は、また機会に。

風前の灯となった、JR三江線訪問の旅でした。

★↓三江線との関係は・・・もう1つの陰陽連絡線は、こちらをどうぞ↓★

浜田市に残る陰陽連絡鉄道の夢の跡−紆余曲折に消えた幻の国鉄今福線−【前編】

★↓鉄道の話題はこちらもどうぞ↓★

非電化区間で活躍した往年の列車たち−津山まなびの鉄道館−

古き鉄道時代の面影を残す悠久の旅路−大井川鉄道・かわね路号−

300円で乗れる新幹線?在来線なのに新幹線?−JR西日本博多南線−

兵庫県内の弾丸列車ルート【まとめ】と広島に残る弾丸列車建設の痕跡【第二部・番外編】

さようなら、日本最長昼行特急「しなの」号−大阪〜長野441.2kmの旅路−【前編】

85周年を迎えた若桜鉄道を訪ねて−構内の展示運転(回想記)ほか−

現在も生き続ける同和鉱業片上鉄道−柵原ふれあい鉱山公園を訪ねて−

山陽新幹線全線開業40周年−エヴァンゲリオン新幹線「500 TYPE EVA」発進−(前編)

JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」ー大漁旗で出迎えと国鉄時代の伊予上灘駅−ほか

日本一のミニ私鉄だった紀州鉄道に残る廃線跡−西御坊−日高川を訪ねて−

紀伊半島(三重県)の山中、坑道跡を行く異色のレールマウンテンバイク−瀞流荘駅から湯ノ口温泉駅へ−

運行再開から数か月−春を迎えた信楽高原鐵道−ほか

福知山線(生瀬−武田尾)廃線跡ハイキング2

往年の名車から最新のリニアまで−JR東海のリニア・鉄道館−

青海島と金子みすゞの町、長門市へ−冬晴れの潮彩みすず号−

クリスマス寒波で大雪の山口路−復興祈願のSLクリスマス号−

個性的な新幹線が連続で−ドクターイエローと「くまモン」新幹線−

レールの上を自転車で走る!?−岐阜県飛騨市、神岡鉄道跡のレールマウンテンバイク−

愛媛県内子町に消えた盲腸線、内子線−過去への招待−

休止から70年−いまだに痕跡を残す国鉄有馬線を訪ねて−

旧国鉄五新線(阪本線)を訪ねて【第一部】−奈良県五條市の山間に続く夢の跡−

「大阪市営地下鉄」全線を1日で乗ってみる−前編−

和歌山電鐵のたま電車−駅長はたまちゃん?−

廃線跡ハイキング−テーマパークに消えた桜島線−


ブログトップページはこちら

JUGEMテーマ:鉄道

Comment
いそしず 様
こんばんは、ローカル線をよく訪ねられましたね。私は山歩きを始めた99年の6月に三瓶山を歩きました。
もちろん車ですが、帰りにはたぶん柏淵あたりからと思いますが国道375号線を三次インターまで走っています。
この時には鉄道には気づいてなかったですね。江津までの記事を楽しみにしております。
ころぼっくる様
三江線から三瓶山へは、そう遠くはありませんので、観光鉄道としての需要を掘り起こせそうな気もするのですが、いかんせん、全線通過に時間がかかり過ぎ、また本数も少なすぎの現状では、ほとんど観光目的で利用することは困難ですね。もう少しなんとかならなかったものかとも思いますが、中国山地のローカル線の中でも、木次線と並んで厳しい区間と思いますので、廃止も致し方ないといったところでしょうか。
粕淵駅の訪問後は、その三瓶山の方へとまわりましたので、残念ながら江津方面への記事にはつながりません・・・。続きがあるような書き方をしていますのは、陰陽連絡線として三江線と同時期に建設が進められていた、もう1つの幻の鉄道の存在があったためです。先日、訪問してきましたので、なるべく早くアップするつもりです。鉄道ネタが多くなっておりますが、よろしくお願いいたします^^;





   
この記事のトラックバックURL : http://mainblog.iso4z.com/trackback/34

カウンター

アクセスカウンター
アクセスカウンター
アクセスカウンター
ブランド買取***word-2******word-3******word-4******word-5******word-6******word-7******word-8******word-9***

Calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>

スマホ版で表示する

トップページに戻る

Profile

Archive

Mobile

qrcode

Selected Entry

Comment

  • 兵庫県内の弾丸列車ルート【まとめ】と広島に残る弾丸列車建設の痕跡【第二部・番外編】
    いそしず
  • 残されていた幻の新岡山駅建設構想−弾丸列車計画と岡山臨港鉄道の軌跡−【第弐部・第一章】
    おく
  • ラグビー・花火のコラボで頑張る女子プロ野球・兵庫ディオーネ×埼玉アストライア【ほっともっとフィールド神戸】
    ラーメンまん
  • 兵庫県内の弾丸列車ルート【まとめ】と広島に残る弾丸列車建設の痕跡【第二部・番外編】
    DMSO-d6
  • 神戸市須磨区の板宿本通商店街周辺散歩−いたやどかりちゃんは今−
    まるかまき
  • 2017年初詣・養父神社とハチ高原スキー場・新春花火大会
    いそしず
  • 2017年初詣・養父神社とハチ高原スキー場・新春花火大会
    ころぼっくる
  • たかがお土産、されどお土産−各地で氾濫する恋人シリーズ【第3弾】−
    いそしず
  • たかがお土産、されどお土産−各地で氾濫する恋人シリーズ【第3弾】−
    10
  • 四国に残る唯一の廃止路線の鉄路−廃線ウォークで蘇る旧内子線−【後編】
    いそしず

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM